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先ずは、悩みの視覚化か

横浜は元町・中華街から海岸通りを数分行ったところに、
独り言の多いマスターがやっているBARがある。
BARの名前は『図美’S BAR』
今夜もマスターが何やら独り言に酔っています……。
先ずは、悩みの視覚化か_f0165332_07275280.jpg
営業自粛が解除された夜、その男はやって来た。
他のお客はその男をドクターXと呼んだ。
ドクターXといっても美人の女医では無い、髭面の小太り男。
みんなは彼をドクターと呼ぶが、だ誰も、どこの病院で、
何科のお医者さんかは知らない。
そう、未確認男性医師、つまりドクターXだ。

「マスター、再開店良かったなぁ~お祝いに来たぞ~
ビールをくれ」
というと、ドクターはカウンターの端に座ると、
両手を広げて「ソーシャルディスタ~ンスッ!」と叫んだ。
マスターの脳裏に山田ルイ53世が浮かんだ。

マスターも負けじと、コロナビールを2本出して、
「ハイ、コロナビールス~」とダジャレを言いながら、
1本をドクターに渡した。
カウンターに付けた手作りのビニールの仕切りが、
いつもの調子と違った。
仕方ない、これも時代だ。

ドクターはマスク越しにブハハッと笑いながら、
「2本ともくれるのかと思ったよ」言った。
「ビール2本も一気に飲んじゃうと、オシッコ近くなりますよ~」
とマスター。
するとドクターは、ドヤ顔でマスターを見ると
「大丈夫!俺、失禁しないので」と、一口ビールを飲んだ。
「えっ、ええ~っ、失敗じゃなくて~!」とマスター

やるな~と気を取り戻し、
「ところでドクター、ウチで飲んでいていいんですか~
今忙しいんでしょう?」と尋ねると。
「コロナウイルスと戦っている、お医者さんに看護師さんな、
うむっ、本当にすごいよ、しかも彼ら、彼女だけじゃ無いぞ、
調理の人や掃除の人、病院で働いている全ての人が戦ってるんだ、
みんなに感謝!」
と言って、ドクターは頭を下げた。

そして、ドクターは言った。
「俺が戦っているのは、心のウイルスってやつかな」
「ということは、ドクターは、精神科のお医者さん?」
「まぁ~そんなところだ」
「ところで、マスターは心配事とかあるか?」
とマスターに尋ねた。
「そりゃ~毎日悩みで、頭がパンクしそうですよ~」とマスター。
「だろうなぁ、そう思ったから来たんだよ」
ドクターは、ビール瓶を振って、無くなっとアピールしながら、
「ところでマスターは何に悩んでるんだい?」と尋ねた。
「そりゃ~お金のこととか、再開したけどお客さん来て
くれるかな?とか、このコロナ騒ぎはいつまで続くだ?
とか、ワクチンはまだ?とか……」と言いながら、
除菌ペーパーで拭いたビール瓶をドクターに渡した。

「じゃぁ、先ずは悩んでいることを紙に書いて見るんだよ、
頭で考えるだけではなく、視覚化する」
「視覚化……」
「そう、そうすれば、自分が解決できそうな悩みと
自分じゃあどうにもならない悩みと区別できるだろ?」
「ワクチンのことも分かる、でもワクチンは、
マスターが作る訳じゃない、大学や製薬会社の
研究している先生にに任せないと」
「多いんだよ、自分では解決できないことに悩んでる人」
「お金は、今の貯金でどう生活するかとか、
どういう給付金があるのか、その請求はどうするかは、
調べて申し込むとか、これは、自分でできるよな」
「気持ちは分かるが、どうしよ~、どうしよ~と、
頭で悩んでいても、前には進まないんだよ」
「しっかり視覚化して、自分のできることを片付け行くんだ」
「どうしよ~から、どうするか?!に考えをチェンジしなきゃ」
そう言いながら、ドクターは2本目のビールを飲み、
「大丈夫!」と一言、そして目で笑った。

その大丈夫が、どちらなのか?……マスターは手元の紙に、
俺への激励、失禁と書いて、
「先ずは、悩みの視覚化か」とポツリと言った。

これは、架空のお話です。












by vacancesclub | 2020-06-02 08:00 | 図美'S BAR
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