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WINDS

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あの干物が、 あの状態で泳いでいたわけじゃ〜ないよなぁ〜。

横浜は元町・中華街から海岸通りを数分行ったところに、
独り言の多いマスターがやっているBARがある。
BARの名前は『図美’S BAR』
今夜もマスターが何やら独り言に酔っています……。
あの干物が、 あの状態で泳いでいたわけじゃ〜ないよなぁ〜。_f0165332_19303805.jpg
コロナウイルス騒ぎで、いよいよ飲食店も
自粛協力を求められ始めていた……。
ウチも明日から営業自粛するか〜と決めた夜、
その男はやって来た。
初めての客だった。

「今日はどこかに寄られた後、ウチに?」
軽く挨拶がわりの質問にその男は、回転椅子をクルッと回し、
背を向け、右腕を高くあげた。
そして3本の指で天を指し、一言いった「ミツコシ!」
「えっ、み、三ツ星じゃなくて?」

マスターも気を取り直し、注文のジャックダニエルと
ナッツの盛り合わせを出しながら、
「ジャックと豆の実(木)なんて〜っ」
と軽い冗談で様子を見た。
彼はジッとナッツを見ながら、クスッと笑った。
元三越レストランのシェフだという彼は、
ピスタチオを一つ手にし、
「マスターこのピスタチオの割れめって、
どうやって出来てるか知ってる?」
とポツリと言った。
「自然に割れたじゃないですか〜?」
とマスター、今度はフッと彼は鼻で笑った。

「そうだね、ほとんどのものは、自然に割れるんだけど、
イラン産の中には、お婆さんが、トンカチでトントン叩いて、
割ってるものもあるらしいよ。」
と言いながら、殻を破った。
お婆さんが、トンカチでトントンッ!
民間の会社でもロケットを打ち上げ様かというこの時代に、
お婆さんが……!マスターは驚いた。
ふと、「母〜さんが〜夜なべ〜をして……」あの歌が
マスターの頭の片隅にハイレゾで流れた。

それって、下田で売ってる魚の干物みたいに、
釣って来た魚を開いて、売っている様なもの?
うわぁ〜手間かってるんだな〜と
ピスタチオをまじまじと見つめるマスター。

「聞いた話だよ。」と彼は、はにかみながら言った。
彼が元三越レストランのシェフという事も
ピスタチオの話も定かでは無い。

しかし、分かっていることは、あの干物も、お父さんが朝釣って来て、
お母さんがサクサクッと開きにして干したんだろうってこと。
(逆もあり)
もしかして、知らないだけで、ピスタチオも実は……。

その時、マスターは「そうだなぁ〜あの干物が、
あの状態で泳いでいたわけじゃ〜ないよなぁ〜。」と
ポツリと言った。











by vacancesclub | 2020-05-11 19:36 | 図美'S BAR
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